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2019-11-17

小説は妄想でできている。「超妄想コンテスト by エブリスタ」

 小説投稿サイトのエブリスタでは、定期的に様々なコンテストを開催している。そのうちの一つに、定められたお題を基に小説を書くというものがある。
 出題されるお題はいつもワンセンテンスだ。今までの例では「ただいま」とか「またね」や「ありがとう」など、そのお題そのものを文章の中に入れなければならない場合と、そういうシチュエーションを条件付けされるケースの二つのパターンがある。エントリーに必要な文章量は概ね八千字程度までだから、アイデアとストーリーさえ固まれば、こういったコンテストにしては楽なほうだろう。
 これがなかなか面白い。お題から物語を想像し作り上げる。お題のそのシーンが先にあって、そこから物語を創造する。細部から全体へ。



 
 しかし。

 アマチュアといえども(プロもいる)多数のクリエーターが集まっているサイトである。であるから、誰もが考えつくような当たり前のアイデアでは、その他大勢に埋もれてしまう。
 コンテストの冒頭および案内の中に「超妄想」「妄想を膨らませて」とあるのを忘れてはいけないのだ。

 手前味噌だが、私の過去のエントリー例をここでご紹介する。

お題「またね」
→ あらすじ
 主人公のルナは、少女の外見をしたアンドロイド。相棒のベルトランと共に、人間の姿が絶えた惑星の、地下深くに構築された都市から地上を目指す。メンテナンスされずに荒れ果てた地下都市は、暴走したAIや様々な危険が溢れている。ルナのボディは本来なら取り替え可能な仕様なのだが、スペアパーツの入手が困難になっているので、もしも甚大なダメージを受けた際は修復できず再起不能になってしまう。それでも危険を冒して地上を目指すのは、はるか昔、ある人物と交わした約束を果たすためだ。
 その人物とはルナの少女の外見のオリジナルであるパトリシア。年齢は十七歳。彼女には婚約者がおり、三年の星間交易船任務から帰ったら結婚する約束をしていた。
 出発する前、彼は自分がいないあいだ、彼女が寂しい思いをしないように、AIアンドロイド"ルナ"を作り上げ、彼女に与えた。しかし彼は帰ってこなかった。
 パトリシアは何年も彼の帰還を待ち続け、やがて衰弱し病に倒れた。彼女が亡くなる前、妹のように可愛がっていたルナを呼び寄せる。自分が死んだらお願いがある。毎年、彼がプロポーズしてくれた二月十四日に、自分が永遠の眠りにつく場所で、彼のプロポーズの言葉を言ってほしい。宇宙の彼方にいるであろう、彼に会うため長い旅を続ける彼女の心の支えになるようにと。
 ルナは、四百回目の地上への冒険を終え、彼女が眠るドームの前に立った。そして約束の言葉を言い、砂漠が延々と広がる大地に目をやる。そこにはかつて海があった。
 日の出から日没までそこに佇んでいたルナは、パトリシアに別れの言葉をいう。さよならではない。また一年後の同じ日にここへ来るのだから。

「またね。パトリシア」


※※※※※※※※※

 これは小説を書き始めた頃の作品である。お題の「またね」から、人類が死に絶えた惑星一面に広がる砂漠、そこに孤島のようにポツンと残る丘と、その上に立つ墓標に別れを言うアンドロイド(人そっくりのAI)を想像した。
 ライトノベルを意識して書き始めたのだが、元来ラノベに向いていないので途中から文体が変わってしまっている。ルナの一人称で進み、登場人物はルナとベルトラン(鳥の外見のアンドロイド)だけ。人間はルナの記憶の中にしか出てこない。
 当時まだ新鮮だったAIの知識を散りばめ、自分では力を入れたつもりだったが、力みすぎてチグハグな作品となってしまった。主人公はアンドロイドなのにアクションシーンもなく地味だ。SFなのに宇宙船も登場しない。さらに、ファンタジー全盛の今日ではSFというジャンルは不人気で読者がつかない。
 それでも優秀作品に選ばれたのは、アイデアだけは評価されたのだと思っている。


 さて、最新のお題は「光」。
単純だ。単純すぎて難しい。どこまで妄想を膨らませることができるだろう。


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