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2019-11-05

ブックレビュー 『怪奇日和』ジョー・ヒル

 
ハーバーbooks

作者のジョー・ヒルは、モダンホラーの巨匠であるスティーブン・キングの息子だ。そのジャンルでは超が付くほど著名な父親と同じ道を歩むにあたって、当然想定される事態がある。それは、父親と比較されるのを避けられないことだ。

 私はキング氏の作品は、新しいものは読んでいないが、現代のアメリカ文化、風俗を織り込んだ作風は、他の作家のホラー一辺倒の作品に比べて文学の香りを感じる。だからキング氏のホラー長編は長くなる傾向があり、私のようにホラーはキュッとまとまっていた方が怖いと考える人間にとっては、それを冗長に感じてしまう。しかし逆に好ましく思う人もいるだろうから、これは好みの問題だろう。

 ジョー・ヒルの作風は父親に似ている。父親の作品よりも、ホラー以外の要素を多く盛り込んである。作品によってはアットホームな雰囲気も漂う。だからあまり怖くない。というより、このジョー・ヒルという作家は、読者を怖がらせようとはあまり思っていないのではないか、と、私は感じる。

 本作は短編集である。短編集にしては結構厚い。それもそのはず、各話は短編にしては長く、中編と言えるかもしれない。冒頭作品のカメラのアイデアは、遺憾ながら平凡に感じた。前の短編集に収録されていた「自発的入院」が発想が変わっていて良かったので、期待したのだが。

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